卒論研究の手順2−資料収集


 大まかなテーマを決めたらすぐに始める。その際、収集に先だってどんな資料があるのかを目録類で探す段階がある。目録としては次のようなものがある。

・国文学年鑑(各年毎―但し平成十七年版で終了。以後は国文学研究資料館のHPにおいてデータベースが提供されているので、今はそれを見ればよい。後述)
・国語国文学研究史大成(三省堂。ちょっと古いが有益。)
・雑誌(主に『国文学解釈と教材の研究』〈二〇〇九年七月号で休刊。創刊は昭和三十一年四月学燈社〉、『国文学解釈と観賞』〈至文堂〉)の特集号
・源氏物語や百人一首のような有名古典なら、独自の目録が出版されている。
・岩波古典大系や小学館古典全集等シリーズ物や個別の注釈書の解説
・国文学研究資料館(http://www.nijl.ac.jp/)の電子資料館 ここには岩波日本古典文学大系(但し旧版)の本文データベースとか国書基本データベース等様々なデータベースがあって有益だが、特に国文学論文目録データベースは必見。キーワードを入れて検索すれば、関係論文の目録が出来る。まず最初にそれをすべき。

@作品

 古典文学の場合、どの作品を研究するかが決まったら、その作品の影印本・活字本・注釈書等、本文を収録する文献を出来るだけたくさん収集する必要があるが、まずは出来るだけ新しい注釈書を入手することが便利。その作品に関する最新の研究成果が盛り込まれているのが普通だし、参考文献などもリストアップされているだろうから。また、入手したら出来るだけ早く通読することが必要。作品を読んだ第一印象が、その後の研究に役立つ場合が多い。場合によると読んでみて魅力が感じられず、他の作品に替えたいという場合もあるが、そういう場合も考慮すれば、作品を通読するのは出来るだけ早い方がよい。
 なお特定の作品ではなく、ジャンルや複数作品を持つ作家、ジャンルや特定の作家に偏らない幅広いテーマ(たとえば和歌に詠まれた動植物とか「わび・さび」「無常観」といった思想・美意識など)を選びたい場合もあろう。その場合、多くの作品の本文を揃える必要があるので、到底個人では買い切れない。その場合は買う本は買える範囲にとどめ、あとは図書館等を利用する、ということでかまわない。但し函館校の図書館だけでは必要な本が全て揃っていることはほとんどありえない。図書館の相互利用も使えるので、なければOPACやWebcat等を利用して検索したり、図書館の職員に相談する。なお杉浦に相談があれば、杉浦が必要と感じた上予算に余裕があれば、研究費による購入も考えられる。但し、研究費で発注した場合入荷まで、更に入荷してから種々の手続きが済んで利用できるようになるまでかなり時間がかかるので、相談は出来るだけ早くしてほしい。四年になってからでは間に合わない。

A参考文献

 研究書、辞典・事典類、文献目録、研究論文等がこれに当たるが、必要なことを調べるためにはたとえば地図・年表・図鑑・新聞・週刊誌・インターネット等、あらゆる資料が参考になる。そうした参考文献の中でまず参照すべきは、出来るだけ新しい論文。それを読めば、その論文が参照した参考文献を芋蔓式に辿ることが出来る(はず。それが出来ない論文は余り質のよくない論文と考えてよい)。なおインターネットのWebページで調査した場合、ページ上に参考文献等が記入してあれば、それを手がかりに該当文献に当たって確認したり、必要な箇所はコピーして手元に保存しておくことが望ましい。Webページは制作者、管理者がページを消してしまえば二度と見ることが出来ない不安定な媒体だし、そもそも執筆者が誰であるか特定できない場合も多いので、論拠として使うのは難しいからである。但し短時間に必要なことを調査できる便利な媒体であることは確かなので、利用を躊躇する必要はない。

B参考文献の整理

 資料収集に当たって調査した本や論文は、題名・著者名・発行年月日・出版社名、論文ならば収録雑誌名や巻・号などをメモしておくこと。そうした情報は奥付、奥書に書いてあるのが普通。
 メモはノートや紙を使うのが普通だが、出来ることならカードを使った方が後で整理したり並べ替えたりするのに便利。カードの使い方は梅棹忠夫著『知的生産の技術』(一九六九年七月岩波新書)が参考になる。
 しかし、パソコンのワープロ(Word、一太郎、OpenOffice.orgなど。OpenOffice.orgには表計算やプレゼンテーションソフトも入っていて全て無料)や表計算(EXCEL。昔はロータス1-2-3や三四郎などを使っていた人もいるが、今はほとんどExcelだろう)、データベースソフト(Access、Filemakerなど)が使えるならば、今ではその方が便利。図書館等で調査する時にはノートにメモしておいたものを、後で表計算シートやデータベースに転記すれば、刊行順に並べ替えたり、論文執筆時にワープロにコピーするなど出来る。調査の際にノートパソコンやタブレットパソコン・スマホなどが使えれば更に便利。デジカメも使えれば便利だが、博物館や美術館などでは使用禁止の場合もあるので注意が必要。