2017年(平成29年)


 定年退職の年でした。これで私の研究も一段落。

徒然草の無常観と成立時期―西尾実・安良岡康作説の検討と批判―
函館国語32号2017年10月28日p3-12.
 徒然草の成立と無常観との関連について、西尾実・安良岡康作氏の説が一定程度支持されてきたが、検討してみるといずれも論として欠陥があり成立しない。西尾氏は徒然草の中に詠嘆的無常観から自覚的無常観への変化があったことを指摘し、その間に執筆時期の違いがあったことを想定、安良岡氏は西尾説を若干修正した上で、徒然草第一部が兼好の30代後半に書かれたと推定したが、推定の根拠が薄弱で、明確に間違いと断定するしかない。

江差の古典籍二―岸田家旧蔵書―
語学文学56号2017年12月1日p1-10.
 道南江差町の旧檜山爾志郡役所内に所在する江差町郷土資料館に収蔵されている古典籍のうち、二番目に点数の多い岸田家旧蔵書について、江差町教育委員会作成の手書き『書籍目録』と杉浦の調査結果が異なる点にについて報告した。具体的には書名と刊写年時である。点数が多いのでそれぞれ出来るだけ簡略に目録の現状と調査結果の違いを説明した。調査に余り時間と人手を掛けられない事情があってもどかしいが、貴重な典籍なので更に活用されることを願う。