2003年(平成15年)


日本文学のキーワード(その一)「無常」
れぎおん40号2003年1月1日2〜7ページ。
 「無常」という語と概念の歴史を辿り、一時的に「無常観」が強調された時代はあったけれども、それは多くの日本人が「無常観」を知識として知ってはいても、結局日本人は長らく「無常観」とは縁遠い国民だった、という見解を示した。但し、バブル崩壊後の日本では明日に希望を持てない人が増え、無常観が本格的にこの国に根付こうとしているのかも知れない、という恐い見通しを付け加えた。

日本文学のキーワード(その二)「もののあはれ」
れぎおん41号2003年4月1日p2-7.
 日本文学にとってとりわけ重要なキーワードである「もののあはれ」を、辞書の解釈、中世以前の使用例の分析、宣長の使用例の意味の分析等によってその使用法を明らかにし、また宣長の「もののあはれ」を知る説が、源氏物語の批評方法として、近代の新批評の方法を170年も前に利用していたことを指摘した。

読む 『徒然草嫌評判』は使えるか
日本文学52巻4号2003年4月10日77-81ページ。
 『徒然草嫌評判』は従来徒然草を感情的に批判したものとして、学問的価値はないと説かれてきたが、よく読めば論理的な構成や徒然草を評価する部分もあり、従来の評価は当たらない、と論じた。

日本文学のキーワード(その三)「ますらを」と「たをやめ」
れぎおん42号2003年7月1日p2〜7。
 賀茂真淵が「ますらをぶり」を主張したことが広く知られているが、実は真淵の著作には「ますらをぶり」という語はないこと。「ますらを」は万葉集においては立派な男子であり官僚を指すが、その後猟師や農民の意に変化したこと。「たをやめ」は「ますらを」に対する語として遅れて発生したが、時代が下れば遊女の意味にもなったこと、などを論じた。

日本文学のキーワード(その四)「言霊」
れぎおん43号2003年10月1日p2-7。
 「言霊」について、万葉集における人麻呂と憶良の歌を分析。また「こと(事・言)」から「ことば」「ことのは」という語が派生した経過を推測した。