1979年(昭和54年)


『或敵打の話』−森鴎外『護持院原の敵討』との比較から−
稿本近代文学2号1979年6月30日p81〜97
 大正9年雑誌『雄弁』に発表された芥川龍之介の『或敵打の話』は、芥川にとっても自信作ではなく世評も低い。確かに同類の先行作森鴎外『護持院原の敵討』と比較して、作品の厚みがないようである。しかしここにもいかにも芥川らしい換骨奪胎のうまさ、人間の寂しさを描く芥川の生涯のテーマがあることを指摘し、併せてこの作品が鴎外の上記作品と、西鶴の『諸国敵討・武道伝来記』を踏まえていたことを論証した。