1993年(平成5年)


『徒然草』と『国歌八論』−和歌は政治の役に立たないという認識をめぐって−
北海道教育大学紀要第1部A人文科学編44巻1号1993年7月30日p1-11.
 『国歌八論』は和歌が政治・実用の役に立たないという第二「翫歌論」の主張によって、同時代においては論争を巻き起こし、現代においては真に近世的な歌論の始発として高く評価されているが、実は四百年も前に、兼好が『徒然草』百二十二段で同様の認識を示していた。その事実を確認するとともに、二人の認識を歌論史の中にどう位置づけるかを探った。勅撰和歌集の序文の歴史を辿ると、和歌が政治の役に立つと公言するのは新古今と風雅ぐらいで、他の集では役に立たないとまでは言わないにしても政治の暇の遊びの産物と位置づけるものが