1978年(昭和53年)


「富嶽の詩神を思ふ」について
稿本近代文学1号1978年8月31日p21〜37
 明治26年雑誌『文学界』初号に掲載された北村透谷のエッセイ「富嶽の詩神を思ふ」は、その世評の高さに透谷自身は落胆していたという。その理由を作品の綿密な読みを通して考察しようとした。その結果確かに本作にはその文体の勢いによって、論理の飛躍や不整合が見られるが、むしろその中に透谷の偽らざる内面が窺えること、また本作が『文選』の『歎逝賦』を大幅に踏まえていたことを指摘した。