1988年(昭和63年)


徒然草の理想と現実−第一段をめぐって(上)−
北海道教育大学紀要第1部A人文科学編38巻2号1988年3月31日p17〜32
 本居宣長の徒然草批判を手がかりに、徒然草における兼好の理想と現実に対する態度を探る手始めとして、「いでやこの世に生まれては、願はしかるべき事こそ多かめれ」と始まる第1段を検討した。そこに列挙された身分・容貌・心・才能が兼好にとって理想的なことであったかどうか、諸説は錯綜しているが、この段を読む限りでは、いずれも理想的なこととして書いていたと読めることを述べた。

兼好家集成立存疑
人文論究48号1988年3月31日p19〜42
 兼好家集の成立に関する諸説を検討し、私見を述べた。私見は巻末8首を除き暦応4年(1341)から貞和2年(1346)の成立、執筆動機は通説の風雅集の資料とするためではなく、「生涯の記念となるべき家集」とする説を支持、巻末8首は延文元年(1356)から4年(1359)に兼好自身が増補、従ってその頃まで兼好が生存していたとする説を提示したことになる。

『八代集の動植物一覧』と稿本八代集動物索引
函館国語4号1988年11月26日p1〜10
 昭和59年に卒論指導をした学生達が、卒論研究の資料として作成した『八代集の動植物一覧』を紹介し、動物の部分を抜き出して補訂し索引としたもの。『新編国歌大観』を底本とし、これによって八代集の和歌に詠み込まれた動物名を全て検索できる。